研究概要 |
In vitroにおいて,Enterococcus foecalis, Streptococcus mutans, Actinomyces viscosusならびにPropionibacterium acnesといったグラム陽性細菌種の単一細菌バイオフィルムをmodified Robbins Deviceを用いてヒドロキシアパタイトディスク上に作製し,Er:YAGレーザーによるバイオフィルムの排除・抑制効果を細菌学的および微細形態学的に検索した.S.mutansとA.viscosusは,被験した全群(20,40ならびに80mJ照射群)においてコントロール群に比べ有意に生菌数が減少したが,E.faecalisとP.acnesは20mJ照射群では有意差はみられなかった.走査型電子顕微鏡による微細形態学的検索の結果,P.acnesを除く3細菌種においてバイオフィルム表層の菌体細胞に扁平化が観察され,バイオフィルム形成細菌がレーザー照射により形態変化を起こしたものと推察された.しかしながら,Fusobacterium nucleatumなどの偏性嫌気性グラム陰性細菌種のバイオフィルムに対するレーザーの効果に関しては,研究実施期間中に達成できず課題として残った.一方,MRDで形成したPorphyromonas gingivalisバイオフィルムに対し,3種類の抗菌剤の効果をATP測定法により検討した.3種の抗菌剤,グルコン酸クロルヘキシジン,ミノサイクリン塩酸塩,メトロニダゾールのうち,クロルヘキシジン作用時には1日後にATP量が約1/1,000まで減少し,その後も7日目まで持続的に減少した.しかしながら,ミノサイクリンとメトロニダゾールのATP量の変化は7日後で約1/2であった.これらより,浮遊系のP.gingivalisには抗菌効果を有するミノサイクリンやメトロニダゾールも,P.gingivalisバイオフィルムに対しては著明な抗菌効果を発揮しないことが明らかとなった. さらに,ガッタパーチャポイントに対する各種プラーク細菌の単一細菌バイオフィルム形成能をin vitro系にて検索し,50%以上の血清添加培地においてE.faecalis, Streptococcus intermedius, Streptococcus sanguisやStaphyrococcus aureusといったグラム陽性細菌が強いバイオフィルム形成能を有していること,P.acnesやグラム陰性細菌であるPorphyromonas gingivalis, F.nucleatumならびにPrevotella intermediaは,ガッタパーチャポイントに対し全く単一細菌バイオフィルムを形成しないことを明らかにした.
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