研究概要 |
私たちは、ヒト歯髄培養細胞を用いて熱感受性受容体であるVR-1の発現とその機能解析を調べ、以下のような結果を得た。 1.ヒト歯髄培養細胞は、VR-1を構成的に発現しており、熱刺激等にその発現は影響を受けなかった。 2.45℃の熱刺激、カプサイシン刺激、pH6の酸刺激は、培養歯髄細胞における炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)の発現を誘導した。また、それらはVR-1アンタゴニストであるカプサゼピンによって抑制された。 3.カプサイシンは、歯髄細胞内の各種情報伝達因子MAPキナーゼ(p38,JNK,およびERK)の活性化を誘導した。また、それらはカプサゼピンにより抑制された。 4.カプサイシン刺激によるIL-6発現誘導は、P38 MAPキナーゼに対する阻害剤により抑制されたが、ERKおよびJNKに対する阻害剤では抑制されなかった。 5.TNF-αの核内転写因子NF-κB活性化誘導に対して、カプサイシンはその誘導を抑制した。 6.VR1発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、その効果はタグ抗体を用いたウェスタンブロット分析により確認した。 7.カプサイシンは歯髄細胞のアポトーシスを誘導した。 以上より、ヒト歯髄細胞上には熱感受性受容体VR-1が発現しており、その活性化が炎症性サイトカインの発現に関与していることがわかった。また、その細胞内伝達にはp38 MAPキナーゼが関与していて、NF-κB非依存的な経路であることが示唆された。さらに、VR-1による歯髄細胞のアポトーシス誘導の結果から、本因子が歯髄炎から歯髄壊死に至るまでの経路に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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