本年度は主に、歯胚から分離した細胞を培養し、象牙芽細胞屁の分化機能を分子生物学的に調べた。胎生12日目のラットの胎児から歯胚を摘出し、酵素処理を行い細胞を分離し、培養した。これらの細胞を高密度で培養する系(HC群)と低密度で培養するする系(LC群)に分け、20日間培養した。HC群では細胞が増殖することがほとんどない系であり、LC群では逆に細胞が活発に増殖する系である。これら細胞群のMSX-1の発現を調べるとHC群ではその発現がLC群に比較して減弱していた。また、象牙芽細胞の最終分化マーカーであるDSPの発現はLC群では増加していたが、HC群ではその発現がほとんどみられなかった。これに対して、神経細胞の分化マーカーであるβ-tubulin IIIの発現はHC群では強いのに対して、LC群ではほとんどみられなかった。 以上の結果から歯胚から分離した未分化間葉細胞は増殖とMSX-1の発現が象牙芽細胞への分化に重要であり、増殖が抑制されるとMSX-1の発現が抑制され神経細胞へに分化が誘導されることが示唆された。これらの所見は神経堤細胞の運命を決定する上で、増殖とMSX-1の発現が重要であることを示している。今後、さらに、MSX-1の作用について調べてゆく予定である。
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