研究概要 |
ラット切歯から分離した歯髄細胞を用いて、そこに存在する未分化な幹細胞から象牙芽細胞への分化を誘導する方法は歯髄の再生療法にとって有用であると考える。そこで、この培養法を使用して創傷治癒に重要な役割を果す血小板由来増殖因子(PDGF)の作用を各ダイマーごとに象牙芽細胞への分化に及ぼす影響を比較検討した。PDGFにはAA, AB, BBというダイマーが存在し、それぞれ生物学的作用が異なることが知られている。今回本研究ではAA, AB, BBの各ダイマーを培養歯髄細胞へ20ng/mlの濃度で添加し14日間培養し、細胞増殖、細胞走化性、細胞分化への影響を調べた。細胞増殖への影響はABとBBで有意に増加したが、AAは対照群と差はなかった。しかし、細胞走化性は逆にAAが強く誘導し、AB, BBは対照群と変化がなかった。細胞分化への影響はALP活性がAB, BB共に有意に抑制され、AAは対照群と比較して変化がみられなかった。DSPmRNAの発現はAAではほとんど影響がなく、AB, BBで強く抑制された。また、培養14日目の石灰化結節の形成にはAAの添加は影響を与えなかったのに対して、AB, BBの添加は著しく抑制した。 以上の結果からPDGFは歯髄のreparative dentinogenesisにおいてはA鎖が細胞の供給に作用し、B鎖は主に細胞増殖を調節することが明かとなった。これらの所見は今後vital pulp tjerapyの発展に対して有用な知見であると考える。
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