研究課題
歯牙の加齢や歯髄処置のために変色を引き起こし、その結果漂白等の処置を余儀なされているのが現状である。しかしながら症例によっては必ずしもこのような処置のよって本来の白さに回復、継続するとは限らない。これらは今までの原因として考えられるヘモグロビン中の鉄分や壊死組織の分解産物の反応物質である硫化鉄であるとは言い切れなく、その他の物質も大きな関与が考えられる。そこで前年度は変色永久歯象牙質を対象として吸光光度計をもちいて無機成分の比較分析をし、その結果正常色永久歯に比較してFe, Mg量が減少し、Zn量が増加しているのを報告した。今年度は乳歯象牙質に含有される無機成分を比較検討した。被検歯は変色乳歯と正常色乳歯を10本ずつもちいた。エナメル質や残存歯髄等を除去した後象牙質 みを粉末状に調整した。酸溶解後日立製作所Z-9000原子吸光光度計によって計測を行った。その結果Ca量は変色、正常ともに同量であった。一方、Fe量は正常色のほうが有意に増加していた。今回の結果よりFe量が多いことが明らかとなったがこれが変色に関与しているか否かは更なる検討が必要であると考えられる。また、無機成分のみならず有機成分すなわちアミノ酸定性、定量も今後の課題と思われる。