コンポジットレジン修復において、窩底部に着色が存在する場合などには、半透明性を有するために周囲歯質に合わせたシェードを選択したにも関わらず、窩底部の色が浮き出てしまい周囲歯質との色調が合わなくなってしまうということがある。コンポジットレジン修復処置は、前歯部をはじめとする審美性も兼ねた修復材料であるため、周囲歯質との色の調和が治療の成否を左右すると言っても過言ではない。このような観点から、現在、多数のオペークレジンが市販されるようになり、研究されてきているが、コンポジットレジンと同様に半透明性を有するため、審美性は優れるものの背景色を十分に遮蔽するには2.0mm以上の厚さを要するという研究報告もある。そこで、本研究では、背景色の遮蔽に効果のある材料として二酸化チタンの応用を考え、従来のルチル型やアナターゼ型の他にアパタイト被覆型二酸化チタンについて検討した。その結果、市販のコンポジットレジンに各々の二酸化チタンを配合することで背景色遮蔽は得られるが、アパタイト被覆型二酸化チタンはルチル型とアナターゼ型に比べコンポジットレジンの重合硬化に影響が少ないことが示唆された。そこで、アパタイト被覆型二酸化チタンを市販の低粘性コンポジットレジンに配合することで試作オペークレジンを作製し、配合率と厚さの違いによる背景色の遮蔽効果を調べ、アパタイト被覆型二酸化チタンの配合率2.00重量%、0.50mmの厚さで、その上に積層されたコンポジットレジンが各々のシェードに最も影響を示さないという結果が得られた。以上のことから、アパタイト被覆型二酸化チタンを配合することで比較的厚さが薄い状態で背景色遮蔽に有効ということが確認され、また、その上に積層される歯冠色コンポジットレジンの多くのシェードに影響を与えることなく対応できるものと考えられた。
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