研究概要 |
抜去ヒト歯から切り出したエナメル質切片をテフロン製モールドに包埋し,エナメル質表面を歯科用漂白剤の松風ハイライトにて処理した.処理後のエナメル質表面を7条件で処理した((1)フッ素配合歯面研磨剤,(2)フッ素未配合歯面研磨剤,(3)シリコーンカップ,(4)グリセリン,(5)歯磨剤の含有フッ素化合物であるモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)水溶液,(6)MFPジェル,(7)ハイライトのみ).また,ハイライトにて処理を行わない,無処理の試料((8))をそれぞれ0.05%ブドウ皮色素水溶液中に,37℃で120日間浸漬した.色素浸漬前後のエナメル質表面の色を分光測色計CM-2600d(コニカミノルタ)にて計測し,浸漬前後のL^*,a^*,b^*値をそれぞれ算出した.色差(ΔE^*ab=〔(ΔL^*)^2+(Δa^*))^2+(Δb^*)^2〕)を求め,一元分散分析,Tukey検定で統計処理を行った(p<0.05). また,臨床において,実際にハイライトにて漂白を行った患者の漂白前,漂白直後および1年経過後の歯冠色を歯科用色彩計ShadeEye(松風)にて計測し,L^*,a^*,b^*値をそれぞれ算出した. その結果,エナメル質切片の色素浸漬後の試料はいずれ条件でも,L^*値が浸漬前より小さく,a^*およびb^*値は大きくなった.色素浸漬前後の色差(ΔE^*ab)は,(1)(フッ素配合歯面研磨剤),(5)(MFP水溶液),(6)(MFPジェル)で,(7)(ハイライトのみ)に比べて小さかった.その他の条件では有意差がなかった.このことから,MFP処理による色素沈着抑制効果が示唆された.また,計測条件が異なることから,直接的に比較することはできないが,臨床における漂白直後と1年経過後のL^*,a^*,b^*値の変化は,a^*値については,固体差が大きく一定の傾向は認められなかったが,L^*値は小さくなり,b^*値は大きくなったことから,L^*およびb^*値については,エナメル質切片の色素浸漬の結果が参考にできると考えられた.
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