研究概要 |
3匹のBeagle犬(1.5歳・♂)の右側前臼歯4本に対して抜髄後,プラークを根管内に挿入して仮封した.1ヶ月後にエックス線写真で根尖病巣が形成されているのを確認してから,仮封を除去しBAGを水で溶いてペースト状にしたものを流入させて再び仮封した.左側前臼歯4本に対しては根尖病巣を形成させてから,BAGの代わりに水酸化カルシウムを水で溶いたものを流入させ再び仮封した.3ヶ月後に屠殺して4%リン酸緩衝中性フォルマリンで浸漬固定(7日間)を行った.ギ酸で脱灰しパラフィン包埋後切片を作製し,HE染色を施した. 対照群である水酸化カルシウムを貼薬した症例も実験群であるBAGを貼薬した症例も共に病巣の縮小傾向を認めた.しかし対照群より実験群の方が病巣の縮小傾向が小さかった.水酸化カルシウムの場合,水で溶いて根管内に丹念に器具で貼薬するとほぼ根尖まで十分に填入が可能であるが,BAGを貼薬した場合,水で溶いて泥状になったものを根管内に填入すると根管に水分が吸収されて,BAGが根尖に到達する前に硬化してしまう症例が多く認められた.その結果根尖孔付近に死腔が形成され根尖病巣の治癒が遅延したものと考えられる. BAGを根管内に貼薬することで根尖部の治癒促進・硬組織形成を図ったが,(1)BAGと水を混ぜても一時的に泥状にはなるが根尖孔付近まで流入させることが難しく(2)抜髄・根管形成後,根管内と根尖病巣が十分交通しているわけではなかったので,病巣内へのBAGの影響はほとんど認められなかった.この実験系ではBAGによる根尖部の硬組織形成促進能を確認することができなかった. BAGを水に溶いて使用するのではなく,何か流動性を持つ基材と混合することで根管内への応用が可能となることが予想され,今後の課題として根管貼薬用の基材を検討する必要があると考えられた.
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