研究概要 |
1.目的 本年度の研究目的は,昨年度開発した、下顎無歯顎堤の3次元形状データから、有限要素(FE)モデルを作成する手法を用いて、咬合力負荷時の義歯の挙動を解析し、その結果から、顎堤形態の分類を試みることである。 2.方法 被検例は、北海道大学病院歯科診療センター咬合系歯科にて下顎の全部床義歯を新製した16症例である。下顎の作業模型,および試適後の蝋義歯を装着した同模型を,非接触3次元デジタイザLPX-250(ローランドDG(株)製)により形状測定した。データから、C++言語にて自作したソフトにより、半自動的にFEモデルを作成した。荷重条件は、人工臼歯中心溝上で前後的中央に左右各1点の荷重点を設定し、各10Nの垂直方向荷重とした。解析結果から、義歯粘膜面上の代表点3点の変位を変数として主成分分析を行い、主成分得点に基づいた階層的クラスター分析により、顎堤形態の分類を試みた。 3.結果 主成分分析の結果、義歯の挙動を考察するにあたり、累積寄与率が約84%となる第3主成分までの考慮で統計学的に十分と考えられた。各主成分の固有ベクトルから、第1主成分は義歯の前後的移動、第2主成分は水平面内での回転、第3主成分は臼歯部での沈下と矢状面内での回転が主に関与していると推測された。クラスター分析の結果、6個のクラスターに分類可能であったが、多くのクラスターが1,2例のみで構成されており、顎堤形態の分類を確立するためには、さらに例数を増やす必要があると考えられた。
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