本研究では合成したポリメタクリル酸ブチル系の粉末ポリマーと、内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)を排除した脂肪族系の可塑剤を用いた新しい粘膜調整材を試作し、次の点を明らかにした。 1.ポリマーの合成 メタクリル酸イソブチル(isoBMA)とメタクリル酸エチル(EMA)の2種のモノマーを用い、これらの単独重合体(isoPBMA、PEMA)および共重合体を懸濁重合法により合成した。 2.ポリマーの粒度と分子量 ポリマーの粒度は、粉液混合物の流動特性やゲル化時間に関係する。合成したポリマーの粒度はisoPBMAが32μm、PEMAは29μm、共重合体は35μmであった。ポリマーの分子量は主に材料のゲル化後の粘弾性特性に関係する。GPC法により測定したポリマーの重量平均分子量はisoPBMAと共重合体が約28万、PEMAは約21万であった。 3.流動性の把握 共重合体粉末ポリマーと、脂肪族系のセバシン酸ジブチル(DBS)のエタノール溶液との混合物について、回転粘度計を用い、流動特性を調べた。エタノールの量を13〜15%、粉液比を1.3〜1.4程度に調節すれば、通常の臨床操作時間内でゲル化することがわかった。 4.動的粘弾性の測定と解析 共重合体粉末とDBSのエタノール溶液との混合物について、動的粘弾性の測定を行い、時問-温度換算則を適用することによって、貯蔵弾性率G´と損失正接tanδのマスターカーブが得られた。試作材料と市販材料は類似したレオロジー特性を示すことがわかった。 本研究の結果によれば、EMAとisoBMAの共重合体粉末とDBSのエタノール溶液を用いることによって、環境ホルモンを排除した生体に安全な新しい粘膜調整材を製造できることが明らかになった。
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