研究概要 |
今年度は,引き続き当科のメンテナンスプロトコル(インプラント周囲歯肉溝滲出液(PICF)の採取,歯周病原生細菌に対する末梢血清抗体価の測定,PCR法を用いたPICF中の細菌検査)に従い,リコールを行うとともに,インプラント周囲炎に代表されるインプラント体周囲の骨破壊,すなわちオッセオインテグレーションを破壊するリスク因子を同定することを目的に,臨床疫学的検討を行った.また,インプラント周囲炎と診断され,インプラント体を除去した患者のうち同意が得られた2人からインプラント体周囲歯肉を採取し,免疫組織学的検討を行った. 【方法】 1.当科で口腔インプラント治療を受けた全患者136人の診療録から,オッセオインテグレーションを破壊すると思われる既知のリスク因子12項目を調査した. 2.オッセオインテグレーション破壊の独立したリスク因子の同定は,上部構造装着前後に,すなわちオッセオインテグレーション獲得と維持にわけこれら12項目を予測因子とした多変量解析により行った. 3.インプラント周囲炎によりインプラント体を除去した患者から採取した歯肉は,通法通り切片を作成し,HE染色ならびに抗MMP-1,-8,-13抗体を用いた免疫染色を行い、コラゲナーゼ産出細胞の局在を観察した. 【結果】 1.多変量解析の結果,オッセオインテグレーション獲得失敗と維持喪失のリスク因子は異なっていた.すなわち,インプラント体周囲の骨破壊のリスクを評価するうえで,オッセオインテグレーション獲得と維持をわける必要性が示唆された. 2.インプラント周囲炎歯肉を用いて免疫組織学的検討を行った結果,炎症性細胞周囲にMMP-8の局在を認めた. 今後引き続き当科の口腔インプラントリコール患者ならびにインプラント周囲炎患者に対し,PICFならびに末梢血採取を行い,ELISA法によるMMPsの定量化,細菌との関連性の検討を行う予定である.
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