研究概要 |
1.モノヨード酢酸(MIA)を用いて変形性膝関節症モデルを作製し,TNFR発現に関して免疫組織化学的検討を行ったところ,対照側,MIA注入側いずれの組織においてもTNFR-IおよびTNFR-II陽性細胞が認められたが,MIA注入側の方が陽性細胞が多数認められた. 2.ラット膝関節軟骨細胞を用い,IL-1βおよびTNFα刺激後における,tnfr発現量をreal-time PCR法で,細胞培養上清中に遊離したsTNFR量をELISA法で定量した結果,tnfr-I発現量は,IL-1βやTNFαによる影響をほとん受けなかったが,tnfr-II発現量は,刺激24時間後で無刺激時の約12倍となった.sTNFR-I濃度は,刺激48時間後に有意な上昇が認められたが,その程度は無刺激時の約2倍にとどまった.sTNFR-II濃度は,刺激48時間後には無刺激時の約5倍となった. 以上の結果より関節軟骨細胞では,TNFR-Iは恒常的に発現しておりTNFR-IIは炎症性サイトカインによる影響を受け発現してくる.さらに両者はsheddingによりsTNFRとして細胞外へと遊離してくることがわかった.昨年度報告した変形性顎関節症患者の滑液中のsTNFR-II濃度が患者の日常生活で支障をきたす疼痛や開口障害と関連があるといった結果をあわせて考えると,変形性顎関節症において,特にsTNFR-IIの産生は炎症性サイトカインの影響を受け,関節軟骨細胞膜上にTNFR-IIが増加発現し,さらにsTNFR-IIとなって滑液中に遊離してくることが示唆された.しかし,なかなか症状の緩解しない重症の変形性顎関節症患者では,このsTNFR-II産生のメカニズムになんらかの異常がある可能性があり,この場合,エタネルセプトのような分子標的治療薬の関節腔内注入療法の効果が期待できるのではないかと考える.
|