研究概要 |
ビスフォスフォネートは、破骨細胞の機能阻害作用を示して骨吸収抑制作用を有することが知られている。本研究はビスフォスフォネートをあらかじめ義歯装着前に義歯床下組織に局所投与し、義歯床を介して義歯床下骨組織に吸収を惹起させた場合の骨動態に及ぼす影響を組織計測的に検討した。 ウィスター系雄性ラット150匹(50匹×3群)のうち2群は義歯装着群とし、残る1群は対照群とした。義歯装着群の動物には臼歯部口蓋を対象として安静時には無圧の状態で接触し、咀嚼時には20kPaの間欠的圧力を加える実験用義歯床を装着した。これらのうちの1群はビスフォスフォネート投与群として、5μgを義歯装着前の2週間毎日、義歯床下となる口蓋組織に注射した。他の1群はビスフォスフォネート非投与群としては生理食塩水を同様に口蓋組織に注射した。なお、義歯装着群に対しては義歯床下粘膜および義歯床の清掃を1週間に2回、3〜4日毎に行った。対照群には何ら処置を施さなかった。 すべての実験動物に対して義歯床装着12週前、義歯床装着時および義歯床装着4日後以降1週間毎にラベリング剤を腹腔内投与した。義歯床装着の1週後から1週毎に10週後まで、各群の5匹ずつを屠殺して研磨標本の作製し,骨面の組織計測を行った。 その結果,義歯床下骨組織における吸収はビスフォスフォネート投与群では義歯装着の2週後まで認められたが,非投与群に比べて期間は短く,吸収面の割合も軽度であった。また,ビスフォスフォネート投与群の骨吸収量は約10μm程度であり,約55μmを示した非投与群に比べると約80%減少した。
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