研究概要 |
口腔内に組成の異なる複数の金属が存在すると電位差を生じ,唾液を電解質溶液としてイオン化傾向の高い金属が溶出する.この現象は金属修復物の腐食を引き起こすとともに,イオン化した歯科用金属に起因するアレルギー症状を惹起する一因となる.本研究は,アレルギー症状を示す患者において,DMAメータ(モリタ社製,Dental Metal Activity Meter・JS2002)を用い口腔内金属の起電力を測定するとともに,パッチテスト結果やアレルギー症状の範囲や重篤度などとの関係について検討し,口腔内環境を改善して口腔内金属のイオン化を軽減するための臨床術式を確立することを目的としている. 本年度は,歯科用金属アレルギーの疑いで徳島大学医学部・歯学部附属病院を受診した患者のうち,本研究の主旨を説明し,同意の得られた患者に対してDMAメータを用いて口腔内に存在する金属修復物と口腔粘膜間に生じる起電力を測定した.科学研究費追加分であったため,実際に機材がそろい,測定を開始し始めたのが,平成16年1月からであったため,現在アレルギー患者14名分131歯の測定にとどまっており,統計処理するには充分な数とは言えない.しかし,アレルギー患者の補綴物のうち,溶出傾向が強いactiveを示した補綴物の割合は,35.1%であり,池戸らの示した11.8%より明らかに高い傾向を示した. 来年度はさらに症例数を増やし,口腔内金属起電力とアレルギー症状の関係について検討する予定である.
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