研究概要 |
筆者らは,超音波刺激が骨形成を促進することに着目し,インプラント周囲の骨形成促進に応用する考えに至った.本研究では,ラット脛骨に埋入した実験インプラントに対する超音波刺激の効果について,形態学的・力学的評価を行った.実験的インプラントフィクスチャーとして,骨接合手術用スクリュウを使用した.Wistarラットの左右両脛骨に専用ドリルでインプラント孔を形成し,スクリュウを専用ドライバーを用いて徒手的に埋入した.埋入手術の翌日より低出力超音波(LIPUS)刺激による実験を開始した.右側脛骨を実験側として,LIPUS刺激を実験期間終了まで毎日20分間与えた.左側脛骨にはLIPUS刺激を与えず,対照側とした.ラットは,スクリュウ埋入後4日目と7日目に屠殺し,それぞれを4日群ならびに7日群とした.左右脛骨を採取し,マイクロフォーカスX線CT(μCT)撮影を行った.3次元画像解析ソフトを使用して,3次元再構築像を構成し,脛骨骨髄中のスクリュウ周囲の観察を行った.その結果、埋入7日後のスクリュウ周囲に骨形成は認められたが,実験側と対象側との間に差は認められなかった.次にインプラントの固定状態を示す指標であるトルク値を測定し,ラット脛骨に埋入されたスクリュウの力学的安定性におけるLIPUSの影響を検討した.ラットの左右脛骨にスクリュウを埋入し,片側にのみLIPUS刺激を7日間与え実験側とした.7日後に専用ドライバーにてスクリュウを徒手的に除去した.スクリュウの埋入時と除去時には,トルクゲージによって埋入,除去それぞれに要するトルク値を計測した.埋入トルク値に対する除去トルク値の比率は,実験側で43%,対照側で37%であった.すなわち,実験側,対象側ともに除去に要するトルク値は埋入に要したトルク値よりも小さな値を示した.実験側では対照側より大きな比率を示したが統計学的に有意な差は認められなかった.
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