研究概要 |
カンジダのホルマリン死菌体を,申請者らがこれまでに行なってきた方法に準じて,正常ウサギの口蓋扁桃に毎週1回6週間滴下し,免疫した.誘導された唾液SIgAおよび血清IgGの量と特異性をELISA法で,菌体の排除に最も強く関係する凝集活性を直接凝集反応で,それぞれ測定したところ,経日的な抗体量の上昇が確認された.このとき,ウサギの口腔内に常在微生物叢の撹乱による菌交代症は起こらなかった.また,カンジダ特異的唾液IgAを誘導したウサギに,アナフィラキシーショックをはじめとするの即時型過敏反応は生じなかった. 誘導された唾液IgAはカンジダの酵母型細胞にも菌糸型細胞にも反応したことから,両者に共通な抗原を認識しているものと考えられた.タンパク染色とウェスタンブロッテングによる解析の結果,誘導された唾液IgAは,カンジダの菌体成分のうち,Factor4〜6と反応する物質,中でも上皮細胞との付着に関与するFactor 6を認識している可能性が示唆された. 誘導された唾液IgAの存在下に,上皮細胞培養系にカンジダを添加したところ,著しい付着抑制効果が認められた.同様の結果が,カンジダの義歯床用レジンについても認められた.これらの結果から,扁桃免疫で誘導した唾液IgAは,副作用なしに口腔内でのカンジダの付着抑制効果を発揮できる可能性が示唆された.
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