研究課題
基盤研究(C)
骨粗鬆症治療薬Bisphosphonate(Bps)は、破骨細胞の活性を抑制するだけでなく、骨芽細胞にも作用し、破骨細胞形成を阻害する因子の産生を、また細胞の分化、増殖、石灰化を促進する。さらには顎骨を浸潤する口腔癌細胞の活性を抑制するとも云われている。本剤をインプラントに固定するとともにその徐放性を制御することにより、本剤の局所投与効果を発揮させることが可能になると考えられる。本研究は、インプラント周囲の母床骨を改善することにより、インプラントの適用範囲を広め、高齢者にも応用できるインプラント材を開発することを目的とし、Bisphosphonateの局所投与効果を発揮させる方法について検討した。先ず、BpsをHydroxyapatite(HAp)の結合機構をFT-IRにて解析した結果、BpsはCaイオンとの配位結合による結合様式が支配的であること、本剤の加水分解抵抗性のP-C-P構造および薬理効果部位には固定化により影響を与えず、固定後にも本剤の薬理効果は発揮できることが明らかとなった。その後、Bpsの徐放性を制御するために、担体であるHApの焼成温度を変化させ、結晶性、比表面積、溶解性を検討するとともに、焼成温度の異なるHApとBisの複合体(Bps-HAp複合体)からのBisの徐放量を測定した。その結果、焼成温度が低いほど結晶性が小さく、比表面積が大きくなり、溶解性は上昇した。また、Bps-HAp複合体からのBpsの徐放量は、HApの焼成温度が引くほど大きくなった。破骨細胞のBps-HAp複合体への投与実験を行った結果、破骨細胞の生存率は、Bps-HAp複合体投与群がコントロールと比較して有意に減少した。以上より、HApの焼成温度を制御することにより、Bps-HAp複合体からのBpsの徐放量を制御できることが明らかとなり、Bisphosphonateの薬物送達システム(DDS)による局所投与の応用の可能性が見いだされた。さらに、チタンメッシュ製Scaffbldに分子プレカーサー法にて炭酸アパタイトをコーティングする方法、およびその物性について検討した結果、炭酸アパタイトがScaffold内部までコーティングできることが明らかとなり、本コーティング膜にBisphosphonateを固定することにより、強度を必要とする部位への骨再生療法の展望が開けた。
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