研究概要 |
本研究では関節細胞として慢性関節リウマチ患者由来の関節滑膜細胞株(MH7A)を用いることとした。この細胞に、変形性顎関節症患者の滑液中で上昇していることが報告され、疼痛との関連も示唆されている炎症性サイトカインInterleukin(IL)-1βを1.0U/mlの濃度で作用させ、ELISA法により各種サイトカインの測定をおこなったところ、3、6、9、および24時間後のIL-8およびMonocyte Chemoattractant Protein(MCP)-1産生が経時的に上昇した。このサイトカイン産生に低出力レーザー照射が、どのように影響するかについて検討を行った。 低出力レーザー照射装置には、波長830nm、出力500mWのGa-Al-As半導体レーザー照射装置(松下電器産業)を用いた。レーザーは培養プレートの細胞表面に対して垂直方向から、総照射エネルギー密度3J/cm^2となるよう10分間パルス照射することとした。関節滑膜細胞に、IL-1βを1,0U/mlの濃度で作用させ、その後に、上記条件で低出力レーザーを照射し、経時的にIL-8およびMCP-1産生量をELISA法により測定したところ、3時間後のIL-8およびMCP-1産生量はレーザー未照射群に比較して有意に減少していた。 IL-8、MCP-1は代表的なchemokineで、主にIL-8は好中球、MCP-1は単球の遊走、活性化に関与している。近年、顎関節症患者の滑液でもIL-8量が上昇していることが報告されているが、これらのサイトカインは生体の恒常性維持に必須であるものの、産生が過剰になると炎症の増大、組織破壊を引き起こすものと考えられることから、低出力レーザーを関節滑膜細胞に照射することにより、これらサイトカインの産生が抑制されることは、炎症の抑制につながることが示唆された。
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