研究概要 |
トレシルクロリド法を用いて細胞接着タンパク質を固定化したチタン上でのヒト歯肉由来線維芽細胞の初期付着について検討した.まず,スライドグラスにマグネトロンスパッタリング法を用いてチタンをコーティングした試料(Ti-glass)を作製した.次に,Ti-glassの表面にトレシルクロリドを37℃で2日間反応させた,トレシル化された試料をコラーゲンまたはフィブロネクチンのPBS溶液(100ppm, pH=7.4)に37℃で1日間浸漬して,細胞接着タンパク質を固定化し,コラーゲン固定化ディスク(Collagen/Ti)およびフィブロネクチン固定化ディスク(Fn/Ti)を作製した.線維芽細胞を1x10^4個ずつ,Collagen/TiおよびFn/Ti試料に播種した.培養液には10%FBS含有Dulbeco's Modified Eagle Mediumを用いた.37℃,5%CO_2雰囲気下で90分間培養した後に,付着細胞数を計測した.対照として,Ti-glassおよび細胞培養用well(TCPS)に付着した細胞数を計測した. FT-IR-RASスペクトルから,接着タンパク質の固定化が判明した.初期付着細胞数の測定結果では,Ti-glassに付着した細胞数はTCPSと同程度であった.Collgen/Ti試料では付着細胞数はTi試料の3倍以上と有意に増加しており,コラーゲン固定化の効果が確認された.一方,Fn/Ti試料では付着細胞数は有意に低下し,フィブロネクチン固定化の効果は見られなかった,フィブロネクチンの活性部位が有効に働かなかったためと推察される.以上の結果から,トレシルクロリドを用いてチタン上に細胞接着タンパク質を固定化した場合,コラーゲン固定では初期の細胞付着数が有意に向上したが,フィブロネクチン固定化ではその効果が見られないことが判明した.
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