研究概要 |
う蝕予防あるいは修復治療などのために,エナメル質表面に種々の陶材やガラス系粉末材料を塗布し,炭酸ガスレーザーを照射し,エナメル質表面のセラミックス化について検討した。セラミックスには,試作のメタリン酸カルシウム系キャスタブルセラミックス(PGC,旭ガラス社製),市販歯科用キャスタブルセラミックス(Crys-Cera,九耐デントセラム社製),ならびに焼付用低溶陶材(Duceram-LFC, Decera社製)および(Degeceram Gold,三金社製)を用いた.各セラミックスを粉砕し,400meshパスしたものを蒸留水に50mg/mlで懸濁液とし用いた。炭酸ガスレーザーには,オペレーザー-03S(ヨシダ製作所)を用い,照射筒先端と照射試料面との距離を20mmに固定した。照射条件は,照射時間30秒,照射強度1.0ワット,照射ビーム径0.49mmした.レーザー照射によるそれらセラミックスの溶融性を調べるために,スライドガラス板状にそれらセラミックスを塗布し,レーザーを照射したところ,各セラミックスは十分溶融することが分かった.次にエナメル質表面上にそれらセラミックスを塗布し,レーザーを照射した.エナメル質試料表面の走査型電子顕微鏡観察では,メタリン酸カルシウム系の試作キャスタブルセラミックスのPGCおよび市販のCrys-Ceraにおいて,溶融したセラミックスがエナメル歯質に浸透し融着した像が観察され,エナメル質表面をセラミックス化することができた。また,セラミックス化した各試料表面に直径3mmの面積を残し,他の面をネイルバーニッシュで被覆し,pH4.0の酢酸緩衝溶液10ml中に吊り下げ,室温下,30分間,200rpmでスターラーを回転させ耐酸性試験を行った。エナメル質より溶出した溶液中のCaイオンを原子吸光分析により定量した。その結果,PGCを塗布し,レーザー照射したエナメル質表面は,未照射のエナメル質に比べ高い耐酸性を示すことが分かった。
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