研究概要 |
酸化チタンは,生体親和性に優れ,かつ光触媒であるため,義歯装着時には抗菌性を発揮せず,口腔内細菌のバランスを崩すことはないと考えられたため,今回の実験に使用した. 物性試験の結果,曲げ強さにおいては,抗菌材を添加した試料はコントロールと比較し,含有率が多くなるに従い低下傾向を示した.しかし,含有率5%までは有意差は認められず,これ以上酸化チタンを添加しない方が良いと考えられた.弾性係数の結果,すべての試料はコントロールに対し,有意差は認められず,酸化チタンの添加量を多くしても問題ないと考えられた.ヌープ硬さ試験では,酸化チタンを添加することによりコントロールより高い値を示し,酸化チタン含有率10%でもっとも高い値を示した.しかしながら,含有率5%まではコントロールと有意差は認められず,曲げ強さと同様に5%までの添加は問題ないと考えられた.吸水率はコントロールと比較し,増加傾向を示した.しかしながら,その増加量は僅少であること,床用レジンの物性を考えると,曲げ強さやヌープ硬さの結果の方が優先されると考えられ,酸化チタンの添加量は0.5%でも問題ないと思われた. 抗菌性試験の結果,生残菌数は2時間照射においても顕著な減少を示し,12〜28%,4時間照射においては0.2〜12%となった.本実験の最小添加量である0.5%でも生残菌数はごく僅かであり,4時間照射で添加量をさらに下げることが可能であることが示唆された. これまで我々は,床用レジンや軟質裏装材に銀イオンを多孔質セラミックスに担持させたアパタイト系抗菌材を添加し,その機械的性質や抗菌性について報告してきた.酸化チタンは光源を必要とするといった欠点を持つ反面,この抗菌材よりも添加量を抑えることが可能であり,床用レジンの物性を損なうことなく抗菌性を有することが確認された.
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