研究概要 |
昨年度までに,ヒトならびにラットを用いて咀噛を伴う摂食を行う群と,咀噛を伴わない摂食を行う群とにわけ,耐糖能の変化を計測してきた. その概要は,固形食と粉末食で飼育したラットにおいて,固形食群ではグルコース投与後の血糖値の上昇量が小さく,ヒトにおけるガム咀嚼群と同様の結果を示し,グルコース負荷試験直前の咀嚼の有無だけでなく,生育中の食餌の性状によっても耐糖能に影響が及ぶことが明らかとなった. 本年度は,昨年度より飼育を開始したラットの飼育を継続し,OGTT時の血糖値の変化を観察することによる耐糖能の変化を測定するとともに,インスリンの分泌を血糖値と同時測定し,耐糖能の違いを惹起する原因の探求を行った. その結果,血糖値においては45週齢では,グルコース投与45分,60分,120分後の粉食群の血糖値が固形食群を危険率5%以下で有意に上回った.さらに,51週齢時においてはグルコース投与後15分より120分までの全ての計測時点で危険率5%以下で粉食群の血糖値が固形食群の血糖値を上回った. また,70週齢時のラットにおけるインスリン分泌値は,粉食群はペレット食群に比べてより高い値を示し,15分値,30分値において両群で優位な差がみられた.また,血糖値上昇量も,粉食群とペレット食群との間に有意な差がみられた. このように,摂取させる飼料の性状の違はインスリン分泌および血糖値に影響を与えることが明らかにされ,生活習慣病発症または予防と,食餌性状とは何らかの関連を有すことが示唆された.
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