本研究は、ヒト顎口腔系における顎関節の形態と運動との関係を、高精度に製作した実体模型から実体感覚のもとで解析することが目的である。 期間内に実施する具体的な目標は、1)顎関節情報処理装置を開発、2)顎関節の形態情報測定と顎運動情報測定の方法を確立、3)光造形装置で高精度な実体模型が製作できる技術を確立、4)実体模型から実体感覚のもとでの解析などである。 本年度は、顎関節情報処理装置を製作し、顎関節の形態と顎運動の測定を行い、研究環境を整えた。 装置のハードウェア製作は、藤村が担当し、消耗品で購入を予定していた顎関節情報処理装置の電子部品を、市販されている情報機器部品から調達して活用した。ハードウェアの基本的な仕様は、当初32bitのCPUでクロックを2GHzとし、マルチCPU方式を採用したパラレル演算が可能なアーキテクチャで設計したが、CPUの進歩や作業時間の短縮要求などから、製作した装置は、静音筐体にインテル社製Pentium43.4GHzのCPUを4個組み込み、並列演算処理が可能なハードウェアとなった。また、ソフトウェアは、開発の自由度を重視してOSにLinuxを採用し、画像処理技術とこれまでのCAD技術の経験を生かして、輪郭抽出アルゴリズムのソフトウェアを独自に改良中である。 分担者の重本は、臨床の立場から研究を行い、顎関節のX線断層撮影方法と顎運動情報を担当した。形態の測定では、各組織の輪郭が抽出しやすい撮影方法や運動データと対応をとるための基準点の設定を確立し、形態データを顎関節情報処置装置へ入力する標準形式を考案中である。また、顎運動の測定方法についても、被験運動と顎関節情報処置装置へ入力する標準形式を考案中である。顎関節情報処置装置へ入力する標準形式は、藤村が主に担当するソフトウェアとも関係が深く、データ入力のインタ・フェースソフトウェアの部分は協同で検討中である。 上記に示した研究成果の一部は、国内外の学会および学術雑誌等で発表した。
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