本研究の目的は、ヒト顎口腔系における顎関節の形態と運動との関係を、高精度に製作した実体模型から実体感覚のもとで解析することである。 研究実施計画に基づき、まず顎関節情報処理装置を開発し、つぎに顎関節の形態情報と顎運動情報の測定方法および光造形装置で高精度な実体模型が製作できる加工技術を確立した。さらに、完成した模型より、画像では得られない実体感覚の解析を行った。実施した結果を以下に示す。 1.顎関節情報処理装置は、市販の情報機器部品を活用し、静音筐体にインテル社製Pentium 43.4GHzのCPUを4個組み込み、並列演算処理が可能なハードウェアを製作した。また、ソフトウェアは、開発の自由度を重視してOSにLinuxを採用し、画像処理技術とこれまでのCAD技術の経験を生かして、輪郭抽出アルゴリズムを独自に考案して処理環境を整えた。 2.顎関節と顎運動の情報測定は、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部坂東教室の協力を得て、正常者を対象に多くの被験者情報を得ることができた。形態情報と運動情報の重ね合わせは、コンピュータグラフィックス上で完成し、剛体条件を仮定した結果と実測で得られた結果の比較を行い、運動時の各顎位における形態が変形する結果を得た。 3.高精度実体模型は、レーザのビーム径、積層方向、積層ピッチ、補強格子等の加工条件を個々の実体模型で追究し、最適な加工状態に製作できる技術を確立した。 4.製作した実体模型は、任意の顎位における顎関節の形態、運動範囲と顎関節を重ねた形態、任意の部位における下顎運動と相補下顎運動の形態が完成し、コンピュータグラフィックスで得られた画像とも比較して解析を行った。 本研究成果は、運動論的顆頭点を通る軸上で、運動範囲の高精度な実体模型が製作でき、また切歯点、臼歯部、穎頭点に対して相補下顎運動の模型が完成したことにより、顎関節の動態を明らかにすることができたことである。
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