研究概要 |
本研究の目的は,5-FUの分解における律速酵素であるDihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)が,5-FUの感受性と関連することに着目し,腫瘍細胞中のDPD活性が高ければ5-FUの抗腫瘍効果は低く,腫瘍細胞中のDPD活性が低ければ5-FUの抗腫瘍効果は高くなり,逆に,人体の正常細胞中のDPD活性が高ければ5-FUの人体に対する副作用は軽く,人体の正常細胞中のDPD活性が低ければ5-FUの人体に対する副作用は重くなるという仮定のもとに,癌化学療法の効果や副作用の程度を術前に評価するシステムを確立することである.平成15年度においては,口腔扁平上皮癌におけるDPDの分布を確認するため,組織切片上で抗DPD抗体を用いた免疫組織化学的検討を行った.その結果,新鮮凍結組織切片を用いるか,ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を用いるかによって,染色結果が異なること,同じ組織切片上においても,場所によって染色結果がことなること,免疫染色の結果によりDPDの発現量がどれだけのレベルで評価し得るかなどの問題が浮上してきた.本研究では,腫瘍細胞および末梢血単核球細胞のmRNAを抽出し,DPD活性を分子生物学的に検討する予定であるが,免疫組織化学的染色における問題は,DPD遺伝子発現の検討においても問題となる.従って,腫瘍組織からのmRNA標本の採取に関しては,免疫組織化学的染色の結果を参考にし,十分検討する必要がある.また,予備実験として,ヒト末梢単核球細胞における5-FUによるアポトーシスの誘導を検討したところ,種々のアポトーシス関連タンパクのmRNAの発現量が,被験者により大きく異なることが明らかとなった.今後このような5-FU処理による影響にDPD活性がどの程度影響しているか検討していく予定である.
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