研究概要 |
これまで,高齢者の周術期におけるストレスホルモンが生体にどのような影響を及ばすのかを検討した結果,Epinephrineを除いて各ストレスホルモンの変化に年齢による違いは認められなかった. また,全身麻酔下口腔外科小手術における健常高齢者の内分泌系の反応は,青壮年者と同じであったことが示唆された.さらに手術侵襲の大きな顎骨骨切り術に低血圧麻酔法を併用し,epinephrine, norepinephrine, dopamine, vasopressin, adrenocorticotropic hormone, cortisol, lactic acid, pyruvate等の内分泌機能検査を行い,ストレスホルモンの分泌量や麻酔時の全身状態を解析,評価中である.これらの研究成果を基礎に,内分泌量からストレスを評価し,麻酔中の催眠レベルの測定を行い,最小用量の麻酔薬,鎮静薬で,麻酔中のストレスを最小限に抑制し,経済的で体にやさしいバランス麻酔を確立することで,麻酔の安全性を向上させることを目標とする. また,ストレスは体に歪みを与える慢性的な身体的侵襲(ストレッサー)に対する生体の防御あるいは適応反応であることから,適切な催眠深度とストレスの関与を解析し,手術侵襲におけるストレスの軽減を試み,術後の全身管理に応用する. 今後,ストレスをコントロールする手段として,貼付用局所麻酔剤に組織を損傷することなく生体深部に到達する半導体レーザーや近赤外線の光線を照射し,その照射部位の麻酔効果をvon Frey馬尾毛による触覚閾値および疼痛閾値の検査を実施し,レーザー照射を行った皮膚の麻酔効果を評価する.上記結果より,ストレスのもととなる各臓器や手術部位に,局所麻酔薬を介して,半導体レーザーや近赤外線を照射し,痛みを取るために注射というストレスを与えるのでなく,レーザーの作用から臓器の活性化や抑制を行うことからストレスのコントロールを試み,ストレスを抑制した生体管理法の立案を行う予定である.
|