研究概要 |
移植舌癌組織に光増感剤をより早期に高濃度に集積させる投与法を確立する目的で,ALA投与後,代謝,生成されるPp-IXの癌組織における集積性を各種投与法により比較し,さらにPp-IX集積性を増加させると考えられている鉄キレート剤(deferoxamine mesilate ; df)の併用効果についても検討を行った.実験には扁平上皮癌(NR-S1)を舌に移植したマウスを用い、ALAを腹腔内(i.p.:250mg/kg)投与,経口(p.o.:500mg/kg)投与,塗布(topical:20%)投与し経時的に摘出した.摘出物の凍結切片作成後,組織内Pp-IX蛍光発光部位を観察し,分光光度計を用い凍結切片を定量計測,腫瘍組織内Pp-IX濃度を比較検討した.以上の各群のPp-IX濃度を比較し,さらに鉄キレート剤併用群はdfをALA投与と同時,ALA投与1,2,3時間前投与の各群に分けdfの併用効果,至適投与法を検討した. その結果,Pp-IX濃度は正常舌組織ではALAの投与量を増加させても変化はみられず,舌癌I.P.群、P.O.群は投与1時間後より正常舌組織投与群に比べ高濃度のPp-IX集積を示し、ALAの腫瘍集積性が認められたが、topical群では有意な腫瘍集積は認められなかった.舌癌における投与法の比較ではP.O.群が最も高濃度の集積を認め、投与5時間後にピークを示した.キレート剤の併用効果はALA経口投与1時間前にdf腹腔内投与した場合に最も効果を示し,腫瘍へのPp-IX集積のピークはALA経口投与約3時間後に早まり,かつPp-IX濃度はALA単独投与に比べ約2倍に増加した.以上より,今回の舌癌モデルにおけるALA-PDTは、ALA経口投与1時間前にdf併用投与し,ALA投与3時間後のレーザー照射が最も効果的と推測され,鉄キレート剤の併用は,今後PDT治療効果の向上,副作用軽減に寄与することが期待された.
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