研究概要 |
平成15年度は、免疫機能と骨粗鬆症の関係を解明するためにヌードマウスを用いた骨粗鬆症原因遺伝子の検索を目的に研究を行った。ヌードマウスとワイルドタイプのマウスに免疫抑制剤FK506を連日28日筋肉注射(1mg/kg)し骨粗鬆症モデルマウスを作製した。まず、3次元マイクロCTと組織切片にて観察した。その結果ワイルドタイプのマイクロCT画像観察では、コントロールとFK投与群に骨梁幅の変化はないが、FK投与群はコントロール群に比べて骨梁の数が減り、骨髄腔は広がっていた。骨質パラメーターはFK投与群では、BV/TV:50.44±0.90%、Tb.S:0.0522±0.053μm.コントロール群では、BV/TV:65.28±0.70%、Tb.S:0.0358±0.052μmでFK投与群に有意な骨梁減少による骨髄腔の広がりを認めた。組織切片による観察では、FK506による実験群の骨吸収はenchondral ossificationより下方でtrabecula boneの減少が認められた。しかし、ヌードマウスではenchondral ossificationより下方での骨吸収はほとんどなく、コントロールと変化がないことから、免疫抑制剤による骨粗鬆症は、T細胞が関係していることが示唆された。次に骨代謝マーカーでの検討を行った。投与開始後1,3,5週後の血清および尿を経時的に採取し,Ca濃度,骨代謝マーカーとして血中オステオカルシン(BGP),ピリジノリン(PYD)とデオキシピリジノリン(Dpd)を測定し骨代謝の指標とした。また,骨吸収促進因子である血中PTH, TNFα,IL-6を測定した。血清Ca濃度は両群ともほぼ一定で正常範囲内を維持したが,尿中Ca濃度はFK投与群では有意な上昇が認められた。骨代謝マーカーのうち,血中BGP値はFK投与群において1週目に有意に増加したが以後減少し,対照群と差は認められなくなった。尿中PYDとDpd総和は投与期間中を通してFK投与群では有意な増加を示した。骨吸収促進因子のうち血中PTHは,FK投与群では対照群と比較し3週目以降,有意に増加した。TNFα,IL-6は両群で有意な差は認められなかった。以上からFK506長期単独投与により高代謝回転型骨粗鬆症様症状が引き起こされることが確認された。投与後初期には骨形成,骨吸収はともに亢進し,以後の骨吸収亢進には全身的要因の一因としてPTHの関与が示唆された。
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