研究概要 |
われわれは、この基盤研究で骨膜に存する骨軟骨形成細胞に着目し、これらを用いた骨組織再生医療のための基礎研究を行った。この研究では岡山大学附属病院倫理委員会承認のもと、ラットの頸骨骨膜から採取した骨膜細胞を用い、これらを三次元構造コラーゲン複合体存在下にDMEM培養液を用いて培養を行い、骨膜細胞コラーゲン複合体を作成した。これらの移植体を免疫抑制を行ったラットの頭蓋骨に作製した骨欠損部に移植した。移植後14、21、35日目に摘出し、骨形成過程を組織学的・X線学的に観察した。この結果、骨欠損部において移植後35日目までに骨形成は観察されるものの骨欠損部をすべて満たすに足る新生骨は観察されなかった。しかし、この手法の新規性は骨形成細胞採取・培養が、きわめて簡便で確実な臨床応用可能な術式である事を証明した。さらにこれら移植細胞の骨形成を効率化させるために骨形成因子BMP-4のエレクトロポレーション法による遺伝子導入療法を行った。BMP-4遺伝子を導入された骨膜細胞は骨形成マーカーであるPCNA, VEGF, CD44,Sox9陽性細胞が優位に増加した。 現在までに骨膜細胞の骨形成能をin vivoにて証明した報告は少なく。この研究結果は将来の臨床再生医療への基礎実験としての成果が確認された。そしてこれらの細胞からの骨形成はBMP-4の遺伝子導入により血管形成因子や細胞増殖マーカーの有意な上昇をみた。こうした遺伝子療法は骨形成能の低下した高齢患者や代謝疾患患者にも適応が期待される有効な治療法となりうる。これらの研究結果を第26回欧州顎顔面外科学会(フランス、トウール)、第4回アジア口腔外科学会(千葉)にてシンポジウム口演を行い報告した。またこの研究の一部を国際雑誌Annals of Plastic Surgery,などに報告した。
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