マウス骨髄間質細胞を細胞成長因子を用いて神経細胞に分化誘導した。神経細胞に特異的な分子マーカーであるNestin、Neurofilament、GFAP(Glial fibrillary acidic protein)に対する抗体を用いて免疫細胞化学法にて調べたところ、すべての抗体に対して細胞が染色され骨髄間質細胞が神経細胞に分化していることが確認された。その後、この分化誘導した神経細胞が神経細胞としての興奮機能を有しているか否かを細胞外電位を記録する電気生理学的検討をおこなった。シャーレ上の神経細胞に3M KCIで満たされたガラス管電極を刺入し細胞外電位を記録した。その結果、シャーレ内の細胞数が多く細胞同士のシナプス形成がなされている神経細胞からは細胞外電位を容易に記録することができた。しかし、シャーレ内の細胞数が少なく顕微鏡下で近接した細胞同士のシナプス形成ができていない神経細胞から自発放電を記録することは困難であった。さらに、この状態において神経成長因子であるNGF(Nerve growth factor)を100ng/mlで添加し細胞外電位を観察した。その結果、シナプス形成のない細胞数の少ない状態ではNGFを添加しても細胞外電位にほとんど変化はみられなかったが、シナプス形成のある細胞数の多い状態ではNGFを添加することにより約1分後に細胞外電位のburstがみられた。このburstは1分から2分間時持続しその後消失した。さらにNGFを追加しても同様の現象がみられた。以上の結果から、骨髄間質細胞から分化誘導した神経細胞は細胞間の神経ネットワークを形成することにより興奮機能を有し、NGFは一過性であるがこの興奮機能を増強することがわかった。
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