細胞成長因子を添加してマウス骨髄間質細胞から神経細胞に分化誘導した後、この神経細胞の興奮性獲得を電気生理学的に検討をおこなった。細胞外電位を記録することにより検討をおこなった。シャーレ上の神経細胞に3M KCIで満たされたガラス管電極を刺入し細胞外電位を記録した。ほとんどの神経細胞から自発放電を記録することができた。さらに細胞に脱分極電流を流すと、ナトリウム電位に類似した波形が記録された。このことから、細胞の興奮性にはナトリウムチャネルが関与していることが示唆された。また、神経成長因子であるNGF(Nerve growth factor)を100ng/mlで添加し細胞外電位を観察した。シナプス形成のある細胞数の多い培養条件では、NGFを添加することにより1分以内に細胞外電位の振幅の増大がみられた。この増大は次第に大きくなり、3分後で最大となった。その後徐々に減弱し投与5分後には消失した。消失後、同濃度のNGFを追加しても同様の現象がみられたが、3回目以降の投与ではNGFによる効果はみられなかった。また。このNGFによる効果は、細胞間のシナプス形成がほとんどない培養条件ではみられなかった。以上の結果から、骨髄間質細胞から分化誘導した神経細胞は電気生理学的に興奮性を有しており、ナトリウムチャネルが関与していることが示唆された。また、NGFは一過性であるがこれら分化誘導した神経細胞の興奮機能およびシナプス伝達機能を増強することが示唆された。今後、NGFによる作用がナトリウムチャネルを介したものか否かを、テトロドトキシン等による阻害作用をもちいて検討する予定である。
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