平成15年度は、平常圧における間葉系細胞の骨代謝への関わりについて基礎的検討を行うことを第一目的に、線維芽細胞を用いて骨芽細胞分化誘導因子、破骨細胞分化誘導因子について検討を行った。既にわれわれはメカニカルストレスによって、上皮細胞より炎症性サイトカインであるIL-1aが分泌促進されることを明らかにしている。そこで、線維芽細胞におけるIL-1aによる骨代謝制御機構について検討を行い、以下の結果を得た。 1.実験の材料として骨膜由来線維芽細胞、歯原性嚢胞由来線維芽細胞、皮膚由来線維芽細胞、歯肉由来線維芽細胞ならびに歯根膜由来線維芽細胞を分離培養した。 2.線維芽細胞では、IL-1aはホスホリパーゼ-イノシトール3リン酸系を介して細胞内カルシュウム貯蔵庫よりカルシュウムを放出させ、細胞内カルシュウム濃度を上昇させた。 3.IL-1aは骨膜由来線維芽細胞、歯原性嚢胞由来線維芽細胞においてBMP-2は発現させなかった。 4.IL-1aは歯原性嚢胞由来線維芽細胞において破骨細胞分化誘導因子であるRANKLの発現を誘導した。 5.この誘導に対するスタチン類の影響を検討したところ、スタチン類は歯原性嚢胞由来線維芽細胞においてIL-1aによるRANKL mRNAの発現を抑制した。 6.IL-1aは線維芽細胞においてOPG mRNAの発現には何ら影響を及ぼさず、スタチン類もこの発現に影響を与えなかった。 7.IL-1aはこれら線維芽細胞においてCOX-2 mRNAの発現を増強させ、PGE2産生を増強させた。 8.このIL-1aによるCOX-2 mRNAの発現は、p-38阻害剤、PKC阻害剤で抑制されたが、ERK活性化阻害剤、NFkB阻害剤では抑制されなかった。 今後は、間葉系幹細胞における骨代謝について検討する予定である。
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