研究概要 |
自然界に多く存在するイノシトール6リン酸(InsP_6)は抗腫瘍作用をもつことが報告されているが、未だそのメカニズムは明らかにされていない。本研究では、InsP_6が抗腫瘍剤として作用するメカニズムを検討するとともに、我々が見いだした新規Ins(1,4,5)P_3結合性蛋白質(PRIP)の関わりについて検討することを目的にしている。InsP_6で処理したHeLa細胞について、その生存細胞数の計測、ヘキスト及びタネル染色を行ったところ、アポトーシスの誘導が認められた。細胞外から添加したInsP_6が作用するためには細胞内に取り込まれて代謝され、何らかのイノシトールリン酸になることが必要である。そこで、[^3H]InsP_6存在下で培養すると脱リン酸化型のイノシトールリン酸類が検出されるかどうか、また一体どのようなイノシトールリン酸が作られるのかについて検討した。その結果、Ins(1,2,3,5,6)P_5、Ins(1,2,3,4,6)P_5、Ins(1,2,3,4/6)P_4、Ins(1,2,46)P_3などが細胞内で生成されることが分かった。また、細胞内に多くのInsP_6が取り込まれるためには、ヒストンと共に培養した方が効率よいことも分かった。PRIP遺伝子で形質変換した細胞を用いて同様の実験を行ったが、本質的には同じ結果が得られた。これらのイノシトールリン酸は通常の細胞内で作られることにないもので、これらがどのような機構でHeLa細胞に細胞死を引き起こすのかについて更に検討する必要がある。
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