研究概要 |
PRIP-1は我々がラット脳より見いだした新規のIns(1,4,5)P_3結合性タンパク質でIns(1,4,5,6)P_4にも結合することが分かっている。一方、PRIP-1のヒト型ホモログが、がんセンターの横田博士らによってヒト肺癌で第2染色体の長腕に存在する欠失領域中の遺伝子として報告され、PRIP-1が癌抑制遺伝子産物である可能性が示唆された。そこで、PRIP分子が細胞増殖や細胞生存に及ぼす影響について、とりわけイシトールリン酸の結合との関連で解明することを目指している。今年度は(1)HeLa細胞(内在性PRIPを有していない)に、PRIP-1の発現を抗生剤によってON/OFF調節が出来る系を構築してそれらの細胞を用いてPRIP-1の有無による細胞増殖の相違を検討した。PRIP発現のON/OFF調節が出来る系の構築は完成したが、PRIP-1の有無によって細胞増殖速度に差異は認められなかった。発現量が少ないために差異が認められなかった可能性もあるため、引き続いて検討を重ねている。(2)野生型とPRIP-1ノックアウトマウスから線維芽細胞などを調製してこれらの細胞についても増殖速度などを比較検討しようとしたが、繊維芽細胞は内在性のPRIP-1を発現していない。内在性に発現しているタイプ2型に注目する必要が生じ、タイプ1とタイプ2のダブルノックアウトマウスを作成することとして、その作成に成功した。(3)細胞延命機構に関わるAkt活性化の素過程(PI3K活性化、PDK活性化、Akt活性化、NF_κBの活性化など)に対するInsP_6の効果についてHeLa細胞を用いて検討し、PI3Kは抑制しないが、その下流にある経路、すなわちPDK活性化、Akt活性化などを抑制することが分かった。
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