本研究の目的は、癌の増殖・転移における、新生リンパ管とそのネットワークを明らかにすることである。 【材料】Wister系ラット(200〜300g、雄)を用いた。 【方法】ラット背部に皮膚欠損層を作成、牛真皮由来コラーゲンスポンジ(テルダーミス)を移植した。正常皮膚および移植部分を摘出し、組織資料を作成した。連続切片を作成し酵素組織化学的染色、免疫組織化学的染色をおこない光学、および電子顕微鏡で観察した。 【結果と考察】コントロールでは真皮、皮下組織のリンパ管が描出されており、とくに真皮毛包周囲に鮮明に認められた。皮膚欠損モデルにおいて、1週では移植部周囲から表皮の侵入が起こり始めた段階である。人工真皮内に旺盛な脈管の新生が見られた。2週でほぼ上皮化が完了した。表皮下に毛包や皮脂腺が断続的に見られた。表皮直下で皮脂腺との間にリンパ管の新生が見られた。4週において、リンパ管は明確に認識されるようになった。再生組織における新生リンパ管ではリンパ管内皮細胞が伸張している様子が観察された。皮膚におけるリンパ管の新生機序はこれまでに報告された血管新生機序と一部類似していた。
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