研究課題
基盤研究(C)
(1)口腔扁平上皮癌においては、癌の根治性の向上のみならず、咀嚼、嚥下、言語および呼吸道としての口腔機能を温存することが課題となる。このため化学放射線治療によるorgan preservation therapyまたは術前治療後の縮小手術の適用が検討されている。当科では進展口腔癌を対象にタキサン系の抗癌薬であるdocetaxel投与を中心とした術前化学療法後、根治手術を行い、可能例には機能温存の為の縮小手術を適用している。今年度の研究においては、口腔癌細胞株を用いて術前化学療法効果を予測すべく、CHFR遺伝子のメチル化を指標としての実験と検証を行った。(2)CHFRのM期調節における役割について検討する目的で、CHFRを発現している細胞と発現していない細胞で、microtubule inhibitorであるdocetaxel投与後の、mitotic indexについて解析した。CHFRがメチル化によって発現していない細胞株は、発現している細胞株に比べ有意に高いマイト-ティックインデックスを示した。また、メチル化阻害剤であるAzaC処理によってCHFRを再発現させたものはmitotic indexの著しい減少が認められ、CHFRによるcheckpointがマイトーシスへのエントリーの制御に重要であることが示唆された。M期調節遺伝子がメチル化により不活化している腫瘍では、G2/Mチェックポイントに異常を認めること、DNAダメージを与えるタイプの抗癌剤に感受性が高い可能性が示唆された。(3)CHFRの異常は口腔癌だけでなく、大腸癌や胃癌、白血病など幅広い腫瘍で認められ、M期チェックポイント遺伝子の中で最も高頻度に変異を認めることが明らかとなった。これらの結果より、口腔癌細胞株においてCHFRのメチル化の有無をmicrotubule inhibitorに対する感受性予測のマーカーとして用いることが出来ると考えられた。(4)RNAiにより遺伝子機能をノックダウンすることによりCHFR遺伝子のメチル化していない細胞株においてdocetaxel、paclitaxelに対して高い感受性を示した。臨床例においてはretrospectiveに検証した結果、生検時にCHFR遺伝子のメチル化を認める症例においては、非メチル化症例よりdocetaxelによる腫瘍縮小効果が高い傾向を示したが、有意差は認められなかった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Cancer biology & therapy 4巻7号
ページ: 773-780
Cancer Biol Ther. 4(7)