研究概要 |
三叉神経は第1枝の眼神経、第2枝の上顎神経、第3枝の下顎神経から構成され、その知覚神経線維の神経細胞体は、三叉神経節に存在し、偽単極細胞の形態を呈する。三叉神経第3枝の末梢枝であるオトガイ神経を発する三叉神経節細胞群の領域を明らかにするため、アドリアマイシンの自家蛍光の特性を利用して以下の実験を行った。 Wistar系ラットを使用し、麻酔後、オトガイ孔部を剖出し、1%,3%,5%のアドリアマイシン溶液をオトガイ神経に注入し、神経の逆行性軸策輸送により、三叉神経節に到達させる。一定期間生存後(12時間後、24時間後、48時間後)灌流固定を行い、三叉神経節を摘出し、急速凍結後、水平断面の連続凍結切片を作成する。蛍光顕微鏡にて観察し、その微弱な蛍光を顕微鏡デジタルカメラにて撮影し、再構築ソフトを使用して三叉神経節におけるオトガイ神経の神経細胞体が占める領域を構築する。 はじめにアドリアマイシンの至適濃度、生存期間について検討した。濃度に関しては、高い方が観察される蛍光の量が多くなり有利であるが、注射液として5%以上の溶解液を作成するのは困難であった。そのため濃度は5%溶液とした。また生存期間については24時間後と48時間後の標本で観察される蛍光の量が同等であったが、確実性を考慮して48時間とした。 三叉神経節のアドリアマイシンの自家蛍光による三次元再構築像の観察においては、オトガイ神経を発する神経細胞群は、三叉神経第3枝の起始部からやや中枢側(頭側)で神経節外側に密集していた。冠状断面で見ると、神経節の下(腹側)から上方(背側)の広い範囲を占めていた。
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