研究課題/領域番号 |
15592123
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
川上 哲司 奈良県立医科大学, 口腔外科, 講師 (60254512)
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研究分担者 |
川上 正良 奈良県立医科大学, 口腔外科, 助手 (20244717)
田中 康春 奈良県立医科大学, 生化学, 助教授 (20124878)
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キーワード | 顎関節症 / Cyclppxygenase-2(COX-2) / 機械的伸展 / 滑膜細胞 / Nuclear factor-κB(NF-κB) |
研究概要 |
Cyclooxygenase(COX)は、アラキドン酸をプロスタグランジン(PG)H2に変換する生体内酵素で、構成的に発現しているCOX-1と、誘導酵素であるCOX-2の2種類に分類される。COX-2の生体内での過剰産生が、PGH2を介して滑膜の炎症に関与し、顎関節痛の発症に重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、顎関節痛の病態生理学的な詳細については依然不明である。 そこで、本研究では顎関節構成体への物理的ストレスを受容する組織として滑膜を想定し、ウサギの培養滑膜細胞(HIG-82)に一軸方向の伸展ストレスを加え、炎症反応に重要な役割を果たすCOX-2の発現誘導が生じるかどうかを検討した。 その結果、ウエスタンブロット分析により、伸展ストレスは、HIG-82細胞のCOX-2を誘導することが示された。また、COX-2をはじめ種々の炎症性サイトカインの転写因子であるnuclear factor(NF)-κBについても検討を加えたところ、機械的伸展によりNF-κBを構成するタンパク質のひとつであるp65の細胞質から核内への移行が生じることも示された。さらに、COX-2の発現誘導やp65の核内への移行は、伸展を反復することにより増強されることも示された。ついで、伸展ストレスが転写レベルでNF-κBを活性化させるかどうかを確かめるため、HIG-82細胞にpNF-κB-LUC Vectorを導入して検討を加えた。その結果、機械的伸展群のNF-κBのルシフェラーゼ活性は、コントロール群と比較して有意に上昇した。以上の結果は、滑膜への機械的ストレスが、NF-κBの活性化を介して、COX-2を誘導することを示している。 本研究結果は、ブラキシズムなどの習癖による反復性ストレスが、COX-2を誘導し、顎関節腔内の炎症を惹起し、顎関節疼痛を引き起こす可能性を示唆している。
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