最近、新たな概念の転移モデルが報告された。すなわち、癌細胞を新生血管の内皮細胞が包み血管内に取り込み、癌細胞は内皮細胞に守られながら血流中を移動し転移巣を作るもので、浸潤能を必要としない転移モデルである。本研究では、口腔癌においてもこの転移モデルと同様な過程で転移が生じるのか明らかにすることを目的とした。今年(H15年)度は、これらの点を明らかにする目的で、免疫組織化学的に検討を行ない、さらに臨床病理学因子との関連について検討した。 研究対象は、1995年から1999年までの5年間に当科で治療を行った舌扁平上皮癌46例で、これらに対し、血管新生因子のひとつであるVascular endotherlial factor (VEGF-C)について免疫組織化学染色により、その局在と臨床進行度ならびに浸潤様式、浸潤程度(Ameroth)との関連について検討した。 その結果、ヒト舌扁平上皮癌において、VEGF-Cのタンパクは腫瘍細胞の浸潤部に強く染色され、染色様式が強いものは所属リンパ節転移が認められた症例が多く、また、高浸潤性を示す結果であった。 以上より、血管新生因子の一つであるVEGF-Cは、舌扁平上皮癌においても腫瘍の浸潤、転移に関与しており、腫瘍細胞を新生血管が包み血管内に取り込み、癌細胞は血流中を移動し転移巣を作ることが示唆され、結果として治療成績を左右する因子の一つになりえるものと思われた。
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