血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor : VEGF)ファミリーのメンバーであるVEGF-Cは、リンパ管新生を誘導して腫瘍細胞のリンパ節転移に関与することが報告され、新しい転移メカニズムのひとつとして注目されている。しかしながら、口腔癌においては、未だ十分な検討がなされていない。そこで、本研究では、舌扁平上皮癌におけるVEGF-Cの臨床病理学的意義を明らかにすることを目的とした。 対象と方法は、当科で治療を行った舌扁平上皮癌39症例で、未治療の生検材料を用いて免疫組織化学的にVEGF-Cの発現を検索し、さらにVEGF-Cの発現と腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、病期分類、組織学的悪性度、浸潤様式、浸潤程度、分化度ならびにpNとの関係について分析した。 その結果、舌扁平上皮癌におけるVEGF-Cの発現は39例中11例(28.2%)に認められた。そして、VEGF-C発現は腫瘍の大きさ、リンパ節転移、病期分類、組織学的悪性度、浸潤様式、浸潤程度ならびに分化度のいずれの因子とも関連はみられなかった。唯一、VEGF-C発現と関連のみられた因子はpNのみであった(P=0.0216)。 これらの結果は、舌扁平上皮癌におけるVEGF-Cの発現はリンパ節転移と密接に関連しており、舌扁平上皮癌のリンパ節転移を予測する重要な因子のひとつになること、また、VEGF-Cの制御は舌扁平上皮癌に対する治療戦略のひとつになることが示唆された。
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