研究概要 |
頭頸部悪性腫瘍の各組織型由来細胞株において重粒子線がどのようなDNA構造変化を引き起こしているか、また、X線と重粒子線との違いについても検討を行った。 方法:組織型の異なる4種類の頭頸部癌由来細胞株、口腔扁平上皮癌・唾液腺癌・悪性黒色腫・ケラチノサイトに対し、炭素イオン線を1,4,7GyE、X線を1,4,8Gyの照射を行った。重粒子・X線とも照射後、1時間・24時間・48時間後にDNAを抽出し、第17番染色体上に散在する6カ所のマイクロサテライト領域をPCR-LOH法を用いてDNA損傷パターンの違いについて解析を試みた。 口腔扁平上皮癌由来細胞株であるCa9における、X線と重粒子線照射後のコロニー形成法と色素排除法を用いた細胞生存率曲線では、放射線を照射すると照射量に比例して生細胞が少なくなることが確認された。また、生存率曲線からも重粒子の効果の方が、X線より大きいことが判明した。 結果:X線・重粒子線照射後の17番染色体の欠失地図では、X線照射後のLOHパターンは扁平上皮癌の48時間後と腺癌の24・48時間後の低線量に多く見られた。しかし、高線量ではどの細胞もLOHの発現頻度は減少していた。一方、重粒子線照射後のLOHパターンはメラノーマの1カ所にのみ認められ、それ以外の損傷変化は全てホモの欠失であった。すなわち、LOHは正常DNAでは2本認められるバンドが腫瘍DNAでは1本消失している。一方、デレーションは正常DNAでは2本認められるバンドが腫瘍DNAでは2本とも消失している。 今回、頭頸部悪性腫瘍由来細胞株に対し重粒子線・X線照射後の17番染色体上のDNA損傷パターンをPCR-LOH法を用いて解析した。その結果、X線照射後はLOHパターンを示す傾向が多い一方、重粒子線ではほとんどがホモの欠失を示していた。これは、重粒子線は時間・線量に関係なくDNAに致死的な構造変化を誘導しているものと考えられた。今後は再現性の確認をさらに追加し、重粒子線の有効性について明らかにしたいと考えている。
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