研究概要 |
本研究では、培養ヒト舌由来扁平上皮癌細胞HSC-4のアポトーシス抵抗性のメカニズム、特にPLD、ERK、およびPI3K/Aktの関与について検討を行っている。昨年度までに阻害剤処理による細胞ストレスによる細胞障害性の変化,PLD1及び2を特異的に阻害するsiRNA配列の検討を行ってきた。本年度は、1、siRNAによるPLD1および2の発現抑制細胞でのサバイバルシグナルの変化2、サバイバルシグナル分子のシグナルカスケードの検討を行った。結果:1、細胞ストレスとしてラクトフェリン由来ペプチド(Lfn-p)投与に対によるPLD活性の上昇は、PLD1の発現を抑制した細胞でより抑制された。2、PLD1を抑制した細胞では、Lfn-pによるAktのリン酸化が抑制されたが、ERKおよびmTORのリン酸化に変化は見られなかった。3、PLDを抑制した細胞では、Lfn-p投与により細胞死シグナルに関与するMAP kinase, JNKおよびp38 MAPキナーゼのリン酸化が観察された。4、Lfn-p投与によるJNKおよびp38 MAPキナーゼのリン酸化は、PI3キナーゼ/Akt経路の阻害剤、WortmanninおよびmTOR阻害剤、Rapamycinにより亢進した。以上よりHSC-4細胞のLfn-PによるPLD活性化には、PLD1が関与する可能性が示唆され、Akt/mTORを介してJNKおよびp38 MAPキナーゼを介する細胞死シグナルを抑制することにより、細胞のサバイバルに関与している可能性が示唆された。研究成果は、第113回日本薬理学会関東部会および第79回日本薬理学会年会にて発表し、"Pepsin-digested Bovine Lactoferrin Induces Apoptotic Cell Death with JNK/SAPK Activation in Oral Cancer Cells." (Sakai, T. et al.)のタイトルにてJ.Pharmacological Sciences誌上に発表した。
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