研究概要 |
本研究では、培養ヒト舌由来扁平上皮癌細胞HSC-4のアポトーシス抵抗性のメカニズム、特にPLD、ERK、およびP13K/Aktの関与について検討を行っている。平成15年度より17年度の助成期間中に以下の点が明らかになった。 1.HSC-4はラクトフェリンによる細胞死に抵抗性を示した。この時、HSC-4 PLDの活性化をみた。 2.HSC-4細胞におけるPLDの活性化には、MAP kinase, ERKの関与が示唆された。 3.PLD阻害による細胞傷害性:1級アルコール(今回は、1-ブタノール)存在による細胞傷害性を2級アルコール(今回は、2-ブタノール)と比較した所、1%で1-ブタノールが2-ブタノールにくらべ細胞を障害した。このことは、HSC-4細胞のcall survivalにPLDが関与する可能性を示唆した。 4.HSC-4細胞には、RT-PCRによりPLD1および2が対照となるSAS細胞と同程度の発現が見られた。 5.細胞ストレスとしてラクトフェリン由来ペプチド(Lfn-p)投与に対によるPLD活性の上昇は、PLD1の発現を抑制した細胞でより抑制された。 6.PLD1を抑制した細胞では、Lfn-pによるAktのリン酸化が抑制されたが、ERKおよびmTORのリン酸化に変化は見られなかった。 7.PLDを抑制した細胞では、Lfn-p投与により細胞死シグナルに関与するMAP kinase, JNKのリン酸化が観察された。 8.Lfn-p投与によるJNKのリン酸化は、P13キナーゼ/Akt経路の阻害剤:Wortmanninにより亢進した。 以上よりHSC-4細胞のLfn-PによるPLD活性化には、PLD1が関与する可能性が示唆され、Akt/mTORを介してJNKを介する細胞死シグナルを抑制することにより、細胞のサバイバルに関与している可能性が示唆された。
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