研究概要 |
GDF (growth and differentiation factor)は骨や歯周組織に発現していることが報告されているが、歯周組織の形成に関係しているものと考えられる。しかしながら、歯周組織の形成や再生過程におけるGDFの機能は知られていないのが現状である。GDFはBMPおよびCBFA-1などのたの成長因子と複雑なクロストーキングを持つことによって歯周組織の形成を調節しているものと考えられる。そこで、歯根形成期におけるこれらの成長因子の局在を検索した。 実験材料と組織学的方法 材料には生後0〜21日のDDYマウス臼歯歯胚を用い、パラフィン切片とした。 GDF5,-6-7,BMPおよびRunx2の抗体およびRNA probeを用いて免疫反応およびin situ hybridizationを行った。Hybridizationでは前記のcDNAを用いて,Digでlabelしたanti-sense鎖あるいはsense鎖RNAを作製し,hybridization液で希釈しで,50℃overnight行う。6×SSCなどで洗滌後,signalを顕微鏡で観察した。免疫反応はABC法およびDABを用いて検出した。 結果 歯冠形成期(生後0日)においては,GDFの反応は歯頚湾曲部(CL)では弱く、CLに面する歯乳頭細胞,前象牙芽細胞および歯小嚢の細胞の反応はCLよりも強かった。歯根形成初期(生後3日および5日)では,歯頚部に歯根象牙質の形成が開始され,Herwig上皮鞘(HERS)に反応はほとんどみられなかったが,HERSに面する歯乳頭細胞,前象牙芽細胞,分泌期初期の象牙芽細胞に強いsignalがみられた。歯根および歯周組織形成期(生後7から14日)では反応は歯根形成初期とは反対に,HERSの細胞にきわめて強く,歯乳頭細胞,前象牙芽細胞および分泌期初期の象牙芽細胞は弱かった。生後10日および14日では反応はセメント芽細胞および歯槽骨壁面に沿う骨芽細胞に認められた。根尖形成期(生後21日)になると,HERSおよび分泌期初期の象牙芽細胞に強いsignalがみられた。BMPおよびRunx2の歯根および歯周組織形成期における反応は,それぞれの時期においてGDFと同様の局在を示した。 GDFは,歯根形成期の上皮-間葉相互作用を調節する成長因子のsignal networkにおいて,核内のtarget遺伝子の発現を調節する転写因子として作用して,HERSおよび歯乳頭細胞の分化の調節および歯根形成の誘導をしているものと考えられた
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