研究概要 |
口腔は多くの外来抗原にさらされることから,癌胞胞巣の周囲に多くの炎症性細胞の浸潤が認められる特徴が明らかとなっている。この口腔癌の特徴を活かし,IL-18遺伝子を導入することで,腫瘍胞巣周囲に浸潤したマクロファージを活性化させ持続的なIFN-γの産生を促し,NK細胞やTcellによる腫瘍細胞融解作用の上昇やFasリガンドの発現増強によるapoptosisの誘導によって殺細胞効果が期待できる。さらにIL-12併用投与を行うことで相乗的にIFN-γ産生をより強力に誘導し,NK活性の増強を図り,より侵襲の少ない新たな治療法の一つとして,口腔癌遺伝子治療の開発を目標としてる。 BALB/CマウスにPAM212/IL-18またはPAM212/vectorを移植した後,以下の投与群において,経日的に腫瘍系を測定し推定腫瘍体積を求め,腫瘍増殖曲線を作成し腫瘍増殖の抑制効果を7日から14日まで経時的観察した。PAM212/vector移植のみでは腫瘍は縮小しなかった。PAM212/vector移植+移植後PBS(-)を腹腔内投与する群でも腫瘍縮小はみなかった。PAM212/vector移植+移植後7日〜14日にreconbinant-IL-12(0.05μg)を腹腔内投与する群では30%に縮小効果をみた。PAM212/IL-18移植群では20%に縮小効果をみた。PAM212/IL-18移植+にreconbinant-IL-12(0.05μg)を腹腔内投与する群では60%に腫瘍縮小効果を認めた。 免疫組織学的検討により縮小効果をみとめた病巣においては,マクロファージ,CD8陽性細胞の多量の浸潤が見られたことからIL-18遺伝子導入により抗腫瘍細胞の誘導がおこり,腫瘍縮小効果をもたらしたと考えられ,口腔扁平上皮癌への遺伝子治療の可能性を示した。
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