研究概要 |
ウサギをKetamine/Xylazine全身麻酔下に開胸しIn vivo虚血再灌流モデルを作成する。虚血再灌流により生じる循環動態(hemodynamics)の変化、不整脈の発生頻度、種類および危険域(以下area at risk)、梗塞巣の大きさ(以下infarct size)を観察し、虚血によるpreconditoningを行う群とsevofluraneによるpreconditioningの群においてsevofluraneの曝露時間、濃度を変化させてsevofluraneの至適吸入条件を詳細に検討する。また、これらのデータをketamine, xylazine麻酔下のデータ(control群)と比較し、虚血およびsevofluraneによる心筋保護効果の効果比較検討する。まず、セボフルランの投与時期の違いによる、心筋虚血再灌流障害への影響について、infarct sizeを指標にして検討した。 【方法】ウサギ(New Zealand White)にKetamine/Xylazine混合液(k/x)を筋注後、左側頚動脈および頚静脈にカテーテルを挿入、気管切開した。換気は、ベンチレータを用いroom airとO_2の混合ガスで行った。開胸後、左冠状動脈前下行枝(LAD)に結紮器を作成した。30分の虚血、180分の再灌流を行ったものをcontrol群(C群)とし、また、sevofluraneを投与する時期により、S1群(虚血5分前)、S2群(虚血直後)、S3群(虚血5分後)、S4群(再灌流5分前)、S5群(再灌流直後)、S6群(再灌流5分後)にそれぞれ分類した。sevofluraneの投与方法は、終末呼気濃度が0%から投与開始し5分後に3.9±0.07%(mean±SEM)となった時点で投与を中止した。全ての群において再灌流が終了後、area at riskを同定するためにLADを再結紮しevans blueを投与した。直ちに心臓を摘出し、凍結後、スライス切片を作製し、TTC溶液にて染色後、infarct size、area at risk、非虚血部位をそれぞれコンピュータに取り込み、infarct size/area at risk(I/R)を算出した。 【結果および考察】Kersten^<1)>らウサギ心筋において、Isofluraneを15分間投与した後、30分の虚血と180分の再灌流を行うと心筋の梗塞層を縮小させることを報告した。しかし、sevoflurane各群におけるI/RはC群53.1±3.5%、S1群50.6±1.5%、S2群50.9±2.5%、S3群51.7±2.0%、S4群52.9±1.7%、S5群53.7±2.4%・S6群54.1±2.3%となりそれぞれ有意差は認められなかった。このことから本研究の実験条件において、sevofluraneによる心筋壊死縮小効果は認められないことが示唆された。 【文献】1) Kersten JR, Schmeling TJ, Hettrick DA' Pagel PS, Gross GJ, Warltier DC : Mechanism of myocardial protection by isoflurane. Role of adenosine triphosphate-regulated potassium (KATP) channels, Anesthesiolog, 1996,85,794-807.
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