研究概要 |
アセトアルデヒドとインドールアミンの縮合産物である哺乳類アルカロイド:β-カルボリンと歯科麻酔薬が相互作用する仮説をたて、飲酒に伴う麻酔耐性の薬理学的機序ならびに毛髪分析で予測できる可能性に関した一連の基礎的研究を行って以下の成果を得た。さらに、膜流動化抑制的な相互作用を炎症組織の局所麻酔効果減弱に、構造特異的な疎水性相互作用を局所麻酔薬の吸着性に関する研究に発展させた。 I.膜活性麻酔薬とβ-カルボリンの相互作用 1-Methyl-1,2,3,4-tetrahydro-β-carboline (MTBC)と誘導体を合成し、膜脂質二重層の流動性変化解析法を確立してin vitro実験に活用した結果、種々の局所麻酔薬と静脈麻酔薬は臨床濃度で神経細胞モデル膜の流動性を亢進するが、MTBCは生体内濃度で逆に低下させた。そして、MTBCはいずれの麻酔薬による膜流動化も抑制するが、MTBCの水酸化代謝物はこの相互作用を起こさないことを明らかにした(土屋博紀他、日本麻酔科学会第50回学術集会、発表)。 II.β-カルボリンの毛髪分析 飲酒に伴い生体内で増加し麻酔薬と相互作用するバイオマーカーとしてβ-カルボリンの非侵襲的毛髪分析法の開発を目指し、酵素的毛髪溶解、選択的溶媒抽出、HPLC-MS同定等の至適分析条件を確立した(Tsuchiya, H.,27th Int.Symposium HPLC 2003,presented)。 III.炎症組織の局所麻酔効果減弱 炎症組織の酸性化や炎症性Peroxynitriteとの反応によって局所麻酔薬が惹起する膜流動化が抑制されることを解明し、炎症組織では局所麻酔が効きにくくなる仮説的機序を提唱した(溝上真樹他、第25回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム、発表)。 IV.局所麻酔薬の吸着 膜相互作用に関与する疎水性の相対的強度が違うことから、持続薬液注入用バルーンへの局所麻酔薬の構造依存的吸着を検証した(溝上真樹他、日本麻酔科学会第50回学術集会、発表)。
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