研究概要 |
家兎を用いて,笑気・酸素による全身麻酔下で研究を行った.気管切開を行い人工呼吸器に接続した後,実験群を正常炭酸ガス分圧群(PaCO2 35-45mmHg)と低炭酸ガス分圧群(PaCO2 25-35mmHg)に分け家兎一羽につき,2つの条件下で実験をおこなった.つまり正常炭酸ガス分圧群では,まず最初に正常炭酸ガス状態にした後に低換気状態下にする.低炭酸ガス分圧群では,過換気状態にした後に正常炭酸ガス分圧に変化させ,それぞれの換気条件下での局所脳血流量の変化を比較する.換気条件は一回換気量を一定にし呼吸回数を変化させることにより炭酸ガス分圧の調節を行った. 実験動物の換気状態が安定した後,開胸を行い,左心耳に直視下でカテーテルを挿入し局所脳血流量測定用マイクロソフェア注入ルートとした.家兎一羽につき各換気条件下でマイクロソフェア(DYE-TRAK, blueおよびDYE-TRAK, yellow)を注入した.その後,静脈麻酔薬を用いて,動物を安楽死させた後,脳・心臓・肝を取り出しホモジナイズを行いマイクロソフェアを回収した.さらに回収したマイクロソフェアの抽出色素の吸光度を分光高度計を用いて求め各臓器の血流量を計測した. 肝における血流量は,低炭酸ガス分圧群において明らかな低下を認めた.局所脳血流量は,低炭酸ガス分圧群において中脳,大脳皮質領域でわずかに低下を認めたが海馬,橋領域では,正常炭酸ガス群との間に有意な脳血流量の低下は観察されなかった. 過換気発作時の意識レベルの低下は,単に全脳血流量の低下により生じるのではなく,中脳,大脳皮質領域の血流低下が強く現れ,局所脳血流量に相違があることが明らかとなった.
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