研究概要 |
現在までに口腔扁平上皮癌200例(通常型170例:転移/非転移各85例、疣贅状癌30例)におけるCOX-2発現と、浸潤・転移に伴う増殖動態の変化について免疫組織化学的検討およびCOX-2 mRNA発現(30例=ISH法)の両面から検索し、COX-2が転移に際して早期に誘導され、転移巣で高発現したものに予後不良例が多いことを見い出した。またCOX-2は癌の浸潤先進部に高発現することが判明した。本所見は、COX-2が口腔癌における浸潤・転移関連遺伝子および予後因子としての性格を有するものとして意義深いものと考えられる。そこで本年度は、上記の結果の裏付けを進めるため、癌の進展とCOX-2発現増強に影響を与える遺伝子、また逆にCOX-2発現による腫瘍細胞増殖促進する因子の探索を進めた。すなわち1)COX-2発現に関連するp53-Rb pathwayおよび細胞周期制御遺伝子群の動向、2)COX-2発現に関連するp53およびRbの各遺伝子に直接的に関与することが予想されるHPV-E6,E7遺伝子産物発現の関与、3)COX-2誘導に関与する誘導因子=サイトカイン各種などの同定とCOX-2 pathwayにおける関与(免疫組織化学的検討および培養系における検討)の3点について検討を進めた。1)についての関連蛋白として、Rb, p16, p21, p27および細胞周期のcheck pointを制御するCyclinB1, D1, E各蛋白の発現動向を検索した。その結果、癌の進展とともに、COX-2が高発現した症例を主体に、p16, p21, Cyclin各蛋白が同様に高発現し逆にp27蛋白の発現低下がみられ、同症例群を主体に予後不良例が多い傾向が示された。従って、口腔癌におけるCOX-2蛋白高発現は、Cyclin/CDK4 complex制御機構の破綻に伴うp27蛋白発現異常と密接な関係を有し、口腔癌患者の予後判定因子と成り得るものと考えられた。3)の検索過程で、COX-2およびlaminin-5γ2間に相互発現が73%の症例に認められ(n=45)、口腔癌浸潤先進部に各蛋白の高発現とともに、66%の症例に両者の相互発現が認められた。これら両蛋白の発現亢進は、各種癌遺伝子異常が腫瘍浸潤を規定するとみられるこれら機能分子の発現を誘導し、浸潤性獲得あるいは助長する可能性が考えられなお検討中である。2)については現在検索を進めている。
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