習慣性口呼吸をする小児の咀嚼・嚥下機能にはどのような特徴があり、咀嚼・嚥下時にどのように呼吸との協調を図っているかを明らかにすることが本研究の目的である。昨年度は、その方法論を確立するために、人為的鼻閉状態下にある成人ボランティアで予備実験を行った。その基礎的データをもとに、本年度は、呼吸動態を観察するパラメータに工夫を加え、さらに小児を対象として導入する際にできるだけシンプルな実験系を作ることが必要と思われたため、成人ボランティアでの追加実験にて測定項目の絞込みを検討した。 本年度の実験で以下のことが示された。鼻閉時、非鼻閉時ともに捕食の際に小さな吸気がみられ、嚥下後は呼気から開始した。しかし、呼吸のリズムと捕食のタイミングにより咀嚼後の呼吸リズムに変化があり、それは鼻閉時により強く出やすかった。非鼻閉時と比較して鼻閉時では咀嚼回数の減少傾向と咀嚼時間の減少がみられ、口呼吸をせずに一気に咀嚼嚥下する例と、咀嚼中に口を開け浅く短い口呼吸をする例とがみられ、代償的反応に個人差がみられた。鼻閉時・非鼻閉時とも僧帽筋には活動量の変化が見られなかった。このため、小児での測定項目から除外することとした。 これら成人ボランティアでの人為的鼻閉状態での実験を経て、習慣性口呼吸をする小児での実験系として、以下の方法を用いることとした。まず、口呼吸に関する医療面接と外部観察から、習慣性口呼吸が疑われる小児を小児歯科外来の6〜8歳の小児から抽出した。その後、安静時とクッキー咀嚼・嚥下時の呼吸モニター監視(口・鼻からのCO2濃度測定と腹部での呼吸圧測定)とビデオ撮影による安静時と咀嚼・嚥下時の姿勢の変化、咀嚼・嚥下時の咀嚼回数と時間、口唇の開閉の外部観察を行った。現在まで得られたデータでは、成人での実験同様、個人間で異なるパターンがみられ、今後対象数を増やすことで、更なる分析が可能になると思われる。
|